2015年07月30日

東京都、新線計画37路線のうち30は「採算取れず」と評価。中央線や小田急線の複々線化も

(7/31 0:05追記。今回の東京都の報告書の意味について、第1段落に追記し、記事の最後に「私見」を追加しました)

 東京都は2015年7月10日、都内で立案されている鉄道新線や複々線化などの37の計画について、採算性や整備効果などをもとに評価を行った調査結果を公表した。そのうち30の計画は採算性や費用対効果に問題があるとした。東京モノレールの東京延伸や、JR新金貨物線の旅客化など、鉄道会社や地元の区などが検討を進めているもののほか、TXや小田急多摩線の延伸、中央線複々線化など、すでに2000年の運輸政策審議会答申に取り上げられた計画についても、採算が取れないとした。しかし、独自に評価した「採算性」の内容は不明。既存区間が一時「負の遺産」と評された多摩モノレールの延伸は、採算性も含め、最高評価だった。

 評価の対象となったのは、2000年の答申で取り上げられながら未着手の21路線(既存路線の複々線化なども含む)と、国や自治体、鉄道会社が検討を進めている16路線。評価は、@採算性(40年以内に累積黒字になるか)、A費用対効果(B/C比が1以上か)、B都が独自で定めた目標への寄与度の3点で行われた。

 調査は、交通政策審議会から今年にも出されると思われる「答申」に向けたもので、5月に「中間まとめ」を発表し、優先すべき5つの路線を挙げていた。今回は評価の低いものも含めて全路線の評価結果を公表した。
 36路線のうち、この3点をすべてクリアしたのは7路線。中間まとめで「優先すべき」と挙げられた5路線のほか、中央区が進めている臨海部と銀座を結ぶ地下鉄路線と、品川と都心を結ぶ地下鉄路線が挙げられた。後者について、日経新聞などは白金高輪と品川を結ぶ路線と報じている。

<採算も取れ、費用対効果も悪くない7路線>

東京8号線延伸(豊洲〜住吉)
・都営大江戸線延伸(光が丘〜大泉学園町)
・多摩都市モノレール延伸(箱根ヶ崎方面)
・多摩都市モノレール延伸(町田方面)
JR東日本の羽田アクセス線
中央区の銀座・臨海部地下鉄構想
・「都心部・品川地下鉄構想」(品川−白金高輪?)

 一方、これら以外の路線については問題があるとしている。まず、単体計画としてみると採算性があるが、他の路線と併せて整備した場合に採算が合わないのが、以下の3路線。(以下、採算に問題がある=40年以内に累積黒字にならない路線、費用対効果が悪い=B/C比が1未満を表します)

<他の路線と同時に整備した場合に採算に問題がある路線>(▲=費用対効果も悪い計画

「蒲蒲線」(※JR東日本羽田アクセス線が整備されると採算性に問題)
・都心直結線都営浅草線バイパス線)▲(※JR東日本羽田アクセス線が整備されると採算性に問題)
・ゆりかもめ延伸(豊洲−勝どき)(※臨海部地下鉄が整備されると採算性に問題)

 それ以外の路線は、単体の計画としても採算性に問題があるという。既存路線の複々線化は、すべてここに含まれている。JR中央線(三鷹以西)や小田急線(和泉多摩川以西)、京王線、西武新宿線・・・。

<採算性に問題がある路線=2000年の答申で挙がった路線>(▲=費用対効果も悪い計画

都営浅草線東京駅接着(日本橋・宝町−東京)▲
・東京8号線延伸(豊洲〜住吉)
・東京8号線延伸(押上〜野田市)
・小田急線複々線化(和泉多摩川〜新百合ヶ丘)
・東京11号線延伸(押上〜松戸)
・JR中央線複々線化(三鷹−立川)
・JR京葉線延伸(東京−新宿−三鷹)
・JR総武線・京葉線接続新線

小田急多摩線延伸(唐木田〜横浜線・相模線方面)▲
・京王線複々線化(調布〜笹塚)
・都営大江戸線延伸(大泉学園町〜武蔵野線方面)▲
・区部周辺部環状公共交通(いわゆるエイトライナー、メトロセブン)
・羽田アクセス新線(答申にあったものの正体不明の路線計画。JR東日本の羽田アクセス新線とルートが近い)▲
・つくばエクスプレスの東京延伸
・東海道貨物支線の旅客化
・多摩都市モノレール延伸(八王子方面)

さらに、前回の答申になく、鉄道会社や自治体などが独自に検討する計画についても、調査を行っている。計画の詳しい内容が不明なものが多いが、報告書の地図資料などから内容を簡単にまとめる。

<採算性に問題がある路線=鉄道会社や地元自治体などで検討されている路線>(▲=費用対効果も悪い計画

・多摩都市モノレール延伸(是政方面)▲
多摩センターから東に進んで、多摩川を渡り、西武多摩川線の是政まで延伸する計画。

・多摩都市モノレール延伸(五日市等方面)▲
箱根ヶ崎から羽村、秋川、八王子、日野などを経て立川などに向かう計画


・西武新宿線複々線化
西武新宿−上石神井間の複々線化

・JR八高線複線化
八王子−高麗川間の複線化

・JR青梅線複線化
東青梅−奥多摩間の複線化

・JR五日市線複線化
拝島−武蔵五日市間の複線化

・東京メトロ丸ノ内線延伸
詳細は不明だが、地図を見る限り、方南町から西進する計画

・JR新金貨物線の旅客化
金町−新小岩操車場間のJR貨物線の旅客化

・JR越中島貨物線の旅客化
亀戸−越中島貨物駅間のJR貨物線の旅客化。

・JR武蔵野南線(貨物線)を活用した羽田アクセス線(八王子−立川−府中本町−新鶴見−??−浜川崎−羽田)▲
詳細が不明だが、地図を見る限り、八王子が起点で、中央線と南武線を経由して府中本町まで行き、そこから武蔵野南線を通って、南武線にまた戻って、尻手から南武支線で浜川崎まで行って、東海道貨物線を経て羽田に向かうというもの。(当初はこのルートへの疑問を提示しましたが、くろださんからコメント欄でご指摘いただきました。その部分を削除します。7/31 0:05)

・西武新宿線東京メトロ東西線相互直通
沼袋−落合間に連絡線を作って直通する計画で、ここ数年は完全に途絶えている。その後、中井−野方間を地下化が報じられている。

・東京モノレールの東京延伸
東京モノレール独自の延伸計画で、すでに審議会で委員に対して説明もしている。

 ここから私見(7/31 0:00に追加)。新線計画を並べて、一律の基準で評価をして、優先順位付けを試みたということは、政治的な力(発言力の大きな議員の地元が優先とか)で決まりがちな公共事業の予算配分を透明化する、という意味ではとてもいいと思います。ただし、都が評価した「採算性の判断」ってのが、実際には信じがたいのも事実です。コメント欄でも指摘があったとおり、一時は都庁から「負の遺産」認定もされたほどの多摩モノレールの評価が高いのは謎です。採算が取れなくても、三多摩格差解消のために進める施策の代表格だと思っておりました。採算性を判断するには、建設費や運行コスト、さらに需要を独自に推定したのでしょうが、どういう根拠でどんな値を算出したのか、きっちり開示してほしいと思います。推進しようとしている路線を意図的に評価を高くするようなことがあっては台無しですから。


(東京都の発表資料)
http://www.metro.tokyo.jp/INET/KONDAN/2015/07/40p7a100.htm

この情報は、るびすさん他よりいただきました。ありがとうございました。
posted by Uchio at 00:44 | Comment(59) | TrackBack(0) | ニュース はてなブックマーク - 東京都、新線計画37路線のうち30は「採算取れず」と評価。中央線や小田急線の複々線化も | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする