2022年07月29日

JRで輸送密度1000人未満の区間「鉄道の存廃を協議」国交省の検討会が提言。ただし対象外の路線も

 国土交通省の有識者検討会は2022年7月25日、地方の赤字鉄道路線の存廃をめぐる議論のための新たな提言をまとめた。
 赤字が続いて存続が難しくなっている路線の将来について、国が主体的に関与する枠みを創設する。提言では、既存の枠組みで沿線自治体が鉄道会社などと協議会を設けて考えることが原則としつつ、自治体だけでは合意形成が困難な場合が多いと指摘している。
 国による新しい枠組みが、仮称「特定線区再構築協議会」で、利用者の「著しい減少」で持続が難しく対策が必要だと認められた線区が対象。鉄道会社(もしくは自治体)の要請で、国が主体的に開催する。
 「著しい減少」の具体的な目安として、JR各社の場合は平常時の輸送密度が1000人を下回っていることを当面の条件とする。ただし、その区間内の隣接する駅間でピーク時1時間の輸送人員が500人を超える区間がある場合は対象外となる。また「基幹的な鉄道ネットワークを形成する線区」も対象外で、その条件は、@拠点都市間を結ぶ特急が走り、相当の利用がある、A貨物列車が走っている、B災害時や有事で貨物列車が走る蓋然性が高いことを国とJR各社で確認した のいずれかに該当する場合だ。さらに、バス転換の代替道路がない線区も対象外としている。
 新しい協議会では、鉄道としての存廃を含めた将来像−−具体的には、鉄道を残しその徹底活用と競争力回復を目指す、もしくはBRTやバスに転換しつつ鉄道と同等かそれ以上の利便性を実現する、などを検討するという。
 また、協議の「出口支援」として、国が制度面で取り組むべきこととして、運賃認可制度の柔軟化、上下分離制度の要件緩和(JRにも適用)などに加えて、特定の要件を満たしたBRTである「特定BRT」導入については法的手続きの簡素化などが考えられるとしている。「特定BRT」の要件の「例」として、鉄道事業者が自ら取り組む、鉄道との通し運賃を設定する、時刻表に鉄道路線に準じる形で掲載されるなどが挙げられている。
 検討会の正式名称は「鉄道事業者と地域の協働による地域モビリティの刷新に関する検討会」。2022年2月から議論して提言をまとめた。
 コロナ禍による経営悪化などを受けて、JR東海を除くJR旅客各社は、それぞれの赤字線区について、区間毎の収支や輸送密度などを公開している。単純に輸送密度だけで見ると1000人以下の区間は数多くあるが、提言にある「対象外」の条件に当てはまるところもそれなりにありそうだ。

(国交省)
https://www.mlit.go.jp/tetudo/tetudo_tk5_000011.html
https://www.mlit.go.jp/tetudo/content/001492230.pdf

(JR九州)
https://www.jrkyushu.co.jp/company/info/data/senkubetsu.html
(JR四国)
https://www.jr-shikoku.co.jp/03_news/press/2022%2005%2017.pdf
(JR西日本)
https://www.westjr.co.jp/press/article/items/220411_02_local.pdf
(JR東日本)
https://www.jreast.co.jp/press/2022/20220728_ho01.pdf
(JR北海道)
https://www.jrhokkaido.co.jp/corporate/mi/senkubetsu/reiwa03/pdf/20220603_KO_2021senku.pdf

この情報は、ライジングさん、関西特派員さん、ムーンライトながら族さん、ポストJRさんほかの皆さまからいただきました。ありがとうございました。
posted by Uchio at 20:02 | Comment(56) | TrackBack(0) | ニュース はてなブックマーク - JRで輸送密度1000人未満の区間「鉄道の存廃を協議」国交省の検討会が提言。ただし対象外の路線も | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする