川崎市は、川崎−新百合ヶ丘間の市営地下鉄(川崎縦貫鉄道)建設計画について、大幅に後退する姿勢を見せている。建設を目指して2001年度から設けられた高速鉄道事業会計を、2012年度限りで閉鎖する方針で、これを報じた読売新聞は「事実上の計画断念」としている。また、2月1日に発表された川崎市総合都市交通計画案では、地下鉄建設は優先度最低に位置づけられている。
川崎市の計画は、当初は、川崎−元住吉−新百合ヶ丘間のルートで地下鉄を建設するというもので、元住吉−新百合ヶ丘間については国から事業許可も得ていた。その後、元住吉ではなく、武蔵小杉を通るルートに変更して、検討が続けられてきた。
しかし、報道各社によると、川崎市の阿部孝夫市長は、高速鉄道事業会計を今年度で閉鎖する方針を発表した。読売新聞によると、市が模索していた新技術による経費削減について、市長は「研究開発に時間がかかる」として、早期の着手を断念したという。
さらに、2013年2月1日に発表した川崎市の都市交通計画案では、市営地下鉄の建設について、優先度が最低の「Cランク」(20年以内に着手)と位置づけられた。
なお、この計画で最優先のAランク(10年以内に完成)に位置づけられたのは、京急大師線の小島新田−東門前間の立体化のみ。2番目のBランク(10年以内に着工)は、大師線の東門前−川崎大師間と、JR南武線の尻手−武蔵小杉間の立体化、小田急線の登戸−向ヶ丘遊園間の複々線化(すでに上りは2線あり、下りが1線のみ)。
これ以外は、すべてCランクに位置づけられた。たとえば、JR南武支線を川崎駅発着にして、浜川崎から東海道貨物線に沿って延伸する「川崎アプローチ線」や、京急大師線の京急川崎−川崎大師間のルート変更を含む立体化などはCランクになっている。横浜市営地下鉄ブルーラインの新百合ヶ丘延伸も、川崎市としてはCランクと位置づけた。
ここから私見です。市営地下鉄の建設断念は、現実的な選択だと思います。このルートで、採算が取れるとは思えません。それ以外の事業では、「あと一息」というところに見える、小田急の登戸−向ヶ丘遊園間の下りの2線目の建設が、Bランク(10年以内に着工)というのんびりした優先順位なのが気になりました。登戸駅近くの区画整理が片付けばすぐなのだろうと思いますが、事情があるのかもしれませんね。
<川崎市の総合都市交通計画案>
http://www.city.kawasaki.jp/templates/pubcom/500/0000043624.html
<読売新聞の記事>
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/kanagawa/news/20130128-OYT8T01717.htm
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某動画サイトでこの計画をざっと見てみたのですが、結構無茶苦茶だった覚えがあります。
10%の人口減少を考慮し、新規開発需要は考慮しないという厳しい需要予測で、それでもなお採算がとれるということなのですから、むしろ採算がとれなければおかしいのです。
新技術の何のと言わずにさっさと着工していればよかったのですが。
そもそも、既存インフラの改良が困難だからこそ建てられた地下鉄計画です。南武線の改良や地下鉄ルート上の道路改良、地下鉄がなければ絶対必要になる川崎縦貫道路・第三京浜野川IC(いずれも仮称)などのを整備するのと、地下鉄を建設するのではどちらが安上がりなのか、考えてもらいたいものです。
まあ鉄道より順位が優先されるのも仕方ないことかと。
もし武蔵野南線旅客化計画(こっちも徒花)がなかったら着工されてたのかなあ。
そして、「10%人口減少」「新規開発なし」という、過大どころか「二重に過小」な需要予測なのですが。これで「過大」なら何が「妥当」なのでしょうか。
採算が取れなくて頭を抱えるどころか、つくばエクスプレスのように輸送力不足で頭を抱えると考えるほうが、よっぽど現実的です。
川崎縦貫道路は外環である程度代替できますが、外環の東名以南(以東)も具体化していないわけで。
東名・中央環状線・羽田/横羽線・保土ヶ谷BPの中は、これほどの人口集積地帯にあってはまれな環状道路希薄地帯ですし。
数軒の立ち退きで済む登戸複々線化やたった数kmの地下鉄延伸を後回し。
一方で川崎駅周辺は異常なほどインフラ注入がされています。
今の市長は市民サービス縮小も酷いしさっさとやめて欲しいですね。
現地の道路構造を知っていますが地権問題があるんでしょうか?小田急の世田谷区内の高架訴訟と言い、登戸−向ヶ丘遊園間の下り2線化と言い、住民の理解を得るのが難しいですね。
小田急沿線から東急田園都市線・東横線、最終的には川崎までというのが目標でしょうが、東急田園都市線の混雑緩和という点でも、田園都市線からどちらか一方への開業でも収益はでそうな気もします。
諸外国のように相続税が廃止ないし減税されればともかく、資産課税強化の流れの中で新たな開発は、昔からの住民には迷惑。
開発するならよそでやってほしい。
需要予測ですが道路に関しては、甘いことが多いと言わざるをえない例が多いですね。
東京湾アクアラインは推定交通量を大幅に下回ってます、最近は割引で交通量は増えましたが採算は取れてません。
鉄道では慎重な需要予測が多いせいか、逆に建設は進まないことが多いですね。
つくばエクスプレスは成功例ですが、北総線の反省を元に宅鉄法など整備しました。
また実際は需要予測だけでなく工費も考慮しないと採算はとれません。
私の近所の多摩都市モノレールは、需要予測は当たり堅調に増え、単年度では
比較的早く黒字になりましたが、工費が予想以上にかかり、利払い負担の為に
債務超過に陥り、結局自治体が支援を行いました。
>これで「過大」なら何が「妥当」なのでしょうか。
工費や運営維持管理費まで含めてでしょうかね。
なお私は反対してるわけでは有りません。
先々のコスト(見込み違い)まで考えないと結局負担になるってことです。
今回、優先順位が下がったのは、何らかの判断が有ったのではと思います。
地権者は地価が上がってうれしいが、財政難の自治体はもうこんなことには付き合っていられない、そういうことじゃないですか。横浜市も既存市街地の高度再開発へと政策転換をしていますから、川崎も遅まきながら倣ったということでしょう。川崎は人口が増えている分、高齢化が一気に来るという時限爆弾を抱えていますからね。
新百合ヶ丘の多摩線の引き上げ線も複々線をつなげるために作ったのに、そこに地下鉄を繋げたいって言い出す始末ですしね。
もうブルーラインの延伸に注力すべきかと
川崎市営の方の経路を見ても長沢、マリアンナ医大とか電車が走るほど開発余地があるのか。東急接続が宮前平では急行停車の鷺沼に連絡するバスに代われるのか。久末、子母口は横浜市営の舞岡みたいに中途半端な状態になりそうですよね(現状の久末〜鷺沼はバスが頻繁するが中原街道は慢性的に渋滞/野川台〜梶が谷はショートカットのバスが運行)。そして子母口〜等々力緑地は中原駅付近を駅に設置せずに経由するし、その辺りのルート制定にも無理があります。
すすき野のブルーライン延伸も均一210円、それぞれ5分間隔ニ路線、でたまプラーザまでのバスがあります(たまプラーザの方があざみ野よりも中心)。嶮山経由にしてもバスが便利なあの地域で地下鉄は本当に必要なのか。と思います。田園都市線の対渋谷アクセスを欲して移り住んだ方が多い地域なので横浜直通も沿線住民の心を掴めるのか疑問です。
因みにグリーンラインが開業した高田、東山田は今でもバスが交通の中心です。それに地下鉄沿線の開発ってほとんど進んでませんよね?
産業道路との交差を無くしたいという各方面の思惑が、色濃く反映されていると感じます。
(個人的には産業道路での踏切事故がないのは奇跡だと思っています)
交通の円滑化にプラスして安全対策がメインの目的ではないでしょうか。
Bランクになっているのも立体交差化による安全対策は弱くなっているものの、
沿線の駅前再開発に目的に加わっています。
残りのCランクは、円滑化がほとんどの目的の計画ですね。
「交通の円滑化」は「安全対策」の御旗の元では霞んでしまうのでしょうね。
尻手黒川道路沿いに電車が走ってくれれば、小倉や加瀬も通勤しやすい土地になるんですが、
適度に便が悪い方が人が集中しなくて、治安が悪くならなそうだと、
という住民の思いもあったり…。
ただ、川崎は政令指定都市ながら、地形がああ縦長では、十分なネットワークが出来ないこと。また、北部の小田急・東急沿線客は川崎駅中心部への依存より、新宿、渋谷、町田などへの依存度と、充実した郊外型商業施設への依存度が高く、通勤需要以外の利用客が望めない。
計画通りに行けば、ある程度競合となるはずだったJR南武線でさえ、昼間は快速入れて毎時8本、快速の停まらない駅では、毎時6本の需要。
これは、川崎市を縦断する動きが少ないことを物語っている。
同県内の横浜市営地下鉄は、新幹線が停まる新横浜、官庁街の関内、そして少子化の中、まだ10年は人口の増加が見込める港北ニュータウンを押さえていても、何十年も赤字、24年連続の経常損益の赤字など、ここ数年でやっと、市民にツケを回さなくてもいい状況になってきた。
少々の事情通なら、ここが出来るなんて、最初から思ってなかったと思う。
この時点で、川崎市の内部でもブルーライン延伸を優先するということに決まっていたのでしょうね。
今回はブルーラインもCになっていますが、南武線の立体化とブルーライン延伸は交換条件になっていますから、南武線立体交差化と同時期にブルーライン延伸が行われる可能性が高いです。
小田急については最優先で取り組んでほしいものです。
複々線化と地下化では使う土地が違いますし、なんか比較が変ですよ。
私はApricot_Lさんのコメントをどう思っているのか、と聞いているのです。
あと産業道路の地下化は絶賛工事中ですよ。
先行で地下化されるんですね > 産業道路
ブルーライン延伸なんて、新ゆりの新住民が喜んだり小田急的に都合が良いだけで、北西部の川崎市民的には新横浜に行くにも川崎臨海方面に行くにも、長年の計画通り川沿いの当初路線どおりつくってもらうのが生活需要にあってたんだけどね。
地下鉄予定沿線と、直接関係が無い溝の口や稲田方面の政治家が、いったん延期されてからエゴを主張し始めた。
グリーンラインも予想以上の需要。
川崎市は全国の中でももっとも最後まで人口が増え続ける地域。それなのに幼稚なレトリックを駆使して、地理的に必要とされ計画されてたインフラ整備を先送りしたこの愚策は、今後実証的な数字で糾弾されることでしょう。
工費や運営・維持費も相当「過大」(余裕を見過ぎという意味)に見積もられていると感じますが。
工費に関しては、副都心線のようにほぼ当初想定内に収まった例もあれば、つくばエクスプレスのように貯金ができてしまった例もあったわけです。川崎内陸部は地盤が安定しており、またほぼ全線が地下区間であり用地買収がほとんどない(区分地上権の取得はある)わけで、工費増加のリスクは少ないです。
ましてや運営・維持費は実績値からの算出です。その実績値もかなり前のものであり、その後費用圧縮のノウハウも蓄積されているわけです(たとえば福岡市交通局は、七隈線の運転要員をJRや西鉄の退職者でまかなうことで賃金を抑えていますよね)。
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横浜市営地下鉄を引き合いに出される方が多いですが、更地に作られた(すなわち数年間は人が乗らない、というか今でも更地のところは多い)横浜市営地下鉄と、すでに(それこそ場所により開発余地が限られるほど)開発された川崎地下鉄予定線沿線とを比べることがいかにナンセンスかは明らかです。予定線沿線には市街化調整区域もほとんどありませんしね。
バスとの競合という側面もなくはないですが、グリーンライン沿線と川崎内陸部とでは、道路事情は雲泥の差ですので、これも比較対象として適切っではありません。
ABCさんの指摘されている通り、南武線立体化とブルーラインとの「政治的取引」の裏で沈められたということなのでしょうね。
ギリギリ元がとれるかどうか、では作るのに二の足を踏むのは当然ではないでしょうか。
優先度Bの高速川崎縦貫線は対岸の木更津まで含めたネットワークなわけですし。
ここにバスを通せば、需要予測の参考になるのに。
地価高騰による固定資産税アップや、住民増加で治安不安になる、とのご見解が上記にありましたが、今にしてみれば「なるほど」という感じです。
野川、久末といえば、その昔は暴走族とか中学が荒れているとかで有名でした。
地下鉄ができた方が、街並みがきれいになってガラも良くなり、人口も増えて、お隣の都筑区のように住民の平均年齢も下がって、街が活性化すると思うのは甘い考えなんでしょうか。地下鉄計画の廃止はつくづく残念です。
てか、前回の市長選は地下鉄推進派ということで阿部さんに投票したのに。今日は投票に行きませんでした。
阿部孝夫市長が引退し、後継候補でない元県議の福田紀彦氏が当選しました。
となると地下鉄はどうなるのでしょうか?
http://www.kanaloco.jp/article/255074
今から整備しても採算は厳しく、賢明な判断と考えます
尻手黒川線の渋滞・混雑緩和に寄与するかと思っただけに、今では”単なる絵空事””机上の空論”となったのは空しい。
やはり、南武線の快速の増発、8両編成化が現実的になると思うね。
※その中で川崎アプローチ線について触れる(【本編】のページ番号66(記載なし、表紙から数えて69ページ目)、【概要版】のページ番号69)
http://www.city.kawasaki.jp/590/page/0000092758.html
※本件についての「カナロコ」の記事
http://www.kanaloco.jp/article/292882