国土交通省は、2020年度の鉄道各線の混雑率の調査結果を発表した。首都圏ではコロナ禍のあおりを受けて、各線とも2019年度と比べて大幅に減少した。
この調査は、国交省が通勤時間帯の混雑状況を把握するため毎年度実施しているもので、各線区の最も混雑した区間の最も混雑した1時間について、輸送力(定員)に対する実際の乗客数を表す数字。首都圏における鉄道政策の基礎的なデータとして長年認識されてきた。2020年度は、2020年9〜11月に調査がおこなわれた。
2020年度に首都圏各線(新交通除く)で最も混雑率が高かったのは、意外にもJR武蔵野線で134%(2019年は166%)だった。地下鉄での1位は、こちらも意外な都営三田線で129%(2019年は161%)だった。どちらも、2019年度までは、より激烈な混雑路線の影に隠れていたが、今回は減少幅が小さかったため1位に躍り出た格好だ。民鉄大手1位は、2019年度と同じく東急田園都市線だったが、2019年度の184%から126%まで下がった(小数第1位まで出すと126.4%。東急目黒線は125.8%)。
2019年度には199%で首都圏1位だった東京メトロ東西線は、2020年度は123%まで下がった。JR東日本の中で長年1位だった総武線緩行も194%から111%と大幅に減った。
減少の度合いが最も大きかったのはJR東海道線(193%→103%)で、ほぼ半減だ。先に挙げた総武緩行線のほか、総武快速線(181%→105%)も減少率が大きかった。
新交通システムでは、日暮里・舎人ライナーが140%(2019年度は189%)と最も高かった。
ここから私見。これまで各社のダイヤ改正リリースで、利用客数の変化がよく触れられていたとはいえ、あらためて各線の数字をみるとその変化の大きさに驚きます。コロナ以後がどうなるかまだ見通せませんが、これまでに出た各社のリリースでは「完全に元には戻らない」との見方が多いようですね。今後のダイヤの動きにも反映されていくことになるのでしょう。新線計画や大規模設備投資への影響もありそうです。
首都圏の主要各線の混雑率は以下の通り。
この情報は、ライジングさんからいただきました。ありがとうございました。
首都圏主要各線の状況を分かりやすくまとめていただきありがとうございます。
「資料4」の「各区間の混雑の見える化(2020)」(=下記(国交省HPより))を見ると、ピーク時よりピーク前の混雑率のほうが高い路線もいくつか見られますね。このあたりも今後のダイヤ改正に影響を与えることとなるでしょうか。
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001413552.pdf
湘南やNEXあるのにそれは加味されてないみたいだし。
後、東急やメトロは通常幅車体なのに、JRの幅広車体148名よりも多い151名というのも合点が行きません。
因みに近畿圏を見てみると、首都圏のような意外性はなかったように思います。減少幅も首都圏のような大幅な減少もなかったです。
JR:学研都市線(鴫野〜京橋駅間)、120%(前年度は139%)
私鉄:近鉄奈良線(河内永和〜布施駅間)・阪急神戸線(神崎川〜十三駅間)、114%(前年度は近鉄は135%、阪急は149%)
地下鉄:大阪メトロ御堂筋線(梅田〜淀屋橋駅間)、116%(前年度は148%)
興味深かったのは福岡市地下鉄で、空港線・箱崎線も七隈線も前年度より増加していました(空港線・箱崎線は101%→115%、七隈線は99%→102%)。何があったんでしょうか…?
【追伸】
管理人様の記事作成も勿論ですが、ライジングさんの資料の方も興味深く拝見させて頂きました。いつもありがとうございます。
東海道・総武快速(横須賀)はG車の分を除いた13両ということです。
湘南新宿ラインは、「輸送人員数はカウントされているが、輸送力にはカウントされていない」ため、結果として東海道線と横須賀線の混雑は、他線区に比べて高い数字(実際よりも高い数字)になっていると聞きました。
どういう理由なのかはよくわかりませんが。
E233系の中間車両は定員160名(ストレート車体の2000番台は150名)ですね。
常磐緩行線は1両平均が140名に対して千代田線に入ると1両あたり11名増えるってのがおかしいです。
相直しているから同じ車両を使っているのにおかしいとしか思えない。
だから通常幅は140名、幅広車体は148名と統一基準で算出すべきでしょう。
相直路線で有れば同じ車両使っているんだから平均人数が違うこと自体おかしいでしょう。
東武の138名は6両編成主体であることや10両でも中間運転台を加味しているからでしょう。伊勢崎線ならブツ8もあるので厳密には出来ないのは分かりますけど。
もっと統一基準を使って正確に出すべきだと思います。
東急やメトロは混雑減らしたいために意図的に車両定員水増ししてるとしか思えません。
目黒線と南北線と埼玉高速は148名なのに三田線は140名ですからね。
>東急やメトロは混雑減らしたいために意図的に車両定員水増ししてるとしか思えません。
いや、寧ろ逆じゃないでしょうか?10両編成で1両あたりの定員数は拡幅の京浜東北E233系が156名、東急2020系が152名ですから、JRの方が定員を少なくして算出しているとも言えそうです。(なお東急5000系、東武50050系、メトロ08系は何れも概ね149名)
>特急やグリーン車も加算すべきですね。
そもそも特急やグリーン車は定員の算出方法も混雑の傾向も全く違う(座席数=定員数)ので、混ぜたら使い物にならないデータになってしまいます。乗車率を出すならデータを分けて出す必要があると思います。
>通常幅は140名、幅広車体は148名と統一基準で算出すべき
中央線快速の編成定員ですが、E233系H編成(分割可能編成)が10両で1,528名、209系1000番台が1,530名と、実はストレート車体の209系の方が上だったりします。
西武のようにストレート車体と拡幅車体が混じって走る路線などもあり、基準を設けるにしてもそれをどこに置くかは難しいところだと思います。
>目黒線と南北線と埼玉高速は148名なのに三田線は140名ですからね。
都営6300形は東急目黒線の中でも定員数が1回り少ないので、大半が6300形使用の三田線の数が減るのはおかしな話ではないと思います。…が、都営6300形の1両あたりの定員数は144なので140の計算では確かに少なく、ここは謎が残ります。
まず分母の輸送力ですが、定員の問題は皆様がいろいろ指摘されていますし、東海道線と横須賀線の問題はすでに書きました。しかし問題はまだありそうです。
計算に使われている編成・本数が実際とは違う路線があるのです。中央快速は中野→新宿の7:41〜8:41で30本になっていますが、ためしに両駅の時刻表で数えてみると28本です。あれ?と思って、今度は山手線内回り新大久保→新宿をみると、23本に対して時刻表では21本です。同様に外回り上野→御徒町は22本に対して21本ですし、東海道線川崎→品川は19本に対して18本です。これで5%くらい率は上がってきますよね。
全線で5%違っていればいっそ一律に修正すればいいですが、違わない線もあるのがまた問題です。京浜東北線、高崎線は同じでしたし、私鉄では、西武新宿線、京王線、田園都市線をみましたが同じでした。もう根気がなくなって、それ以上みる気がなくなりましたが、他にも違っている線があると考える方が自然でしょう。
次は分子の輸送人員です。これは実際に数えることはできないので、調査対象時間の各列車の各車両を外から目視して混雑率を180%などと評価し、これらを平均して「この線は177%」などとしているようです。そして第3者の評価機関がまとめて調べているのではなく、各社にまかされているようです。ですので、当然評価者は異なり、ばらつきが生じるでしょうから、他社や他路線との横並びをみる場合には、たとえ数字は同じでも実際の混雑状況に無視できない違いがある場合もありそうです。
また、これはあらためていう必要もないでしょうが、同一の線でも種別や行先によって混雑の度合いは違うので、利用者によって違う印象を持つこともあります。
興味深いデータですが、取り扱うにあたっては気をつける必要がありそうです。これらを考えると、10くらい数値が違っても実際は逆転していることも十分ありそうですから。
...................................................
上記を勘案しても武蔵野線の東浦和→浦和の混雑率の低下が少ないのは不思議です。武蔵野線全体でも低下が少ないのでしょうか? 何か特有の事情があったのでしょうか?
>中央線快速の編成定員ですが、E233系H編成(分割可能編成)が10両で1,528名、209系1000番台が1,530名と、実はストレート車体の209系の方が上だったりします。
あくまで想像ですが、まずE233系の分割可能編成は209系には無い広いクラッシャブルゾーンがあり、せっかくの幅広車体でも定員142人と209系1000番台の141名とほとんど変わらなくなってしまいます。
しかも先頭車が4両分もあり先頭車2両だけの209系とそれだけ差がついてしまいます。
中間車でも160人と209系の156人より僅かに多い程度なのはE233系は209系に比べて一席あたり座席幅が1p拡大しているため10両分では縦に2m半近く座席が伸びた計算になります。
その分立席スペースも確実に狭くなってるわけで車両の幅広分が相殺されてしまったのかもしれません。
資料をご覧いただきありがとうございます。
Bangkok様
私は最近他の方の発言に何か申し上げることはほとんどありませんでしたが、今回はどうしても気になったので。
「本数が実際とは違う」とおっしゃっておりますが、結論から申しますと例に挙げられた路線は全て正しい本数です…。
・中央快速:通勤特快(2本)を数え忘れておりませんか? ※「中央快速」とは線区名称としての「中央快速線」のことであって種別としての「快速」だけではありません。
・山手外回り内回り:「21本」はおそらく現行ダイヤの本数ですよね…。今年3月のダイヤ改正で減便があったことをお忘れでは?記事にもありますがこの調査は2020年(昨年)実施されたものです。
・東海道:これだけは何度数えても19本なので、なぜ「18本」になるのかよく分かりません。単なる数え間違いでは…?
(1) 山手線の3月の減便は忘れていました。ご指摘ありがとうございます。
(2) 東海道線については、川崎を通過する列車があるかもしれないと思い、7:39〜8:39を品川発(着でみるべきですが大変なので無精をしました)でみたところ18本、この時間帯が発駅(川崎)の時間帯なら11分くらいかかるだろうと7:50〜8:50でみたところ17本だったので、多い方の18本にしました。ご指摘を受けて、7:39〜8:39をあらためて川崎発でみると19本ですね。本数カウントのルールがどこかに書いてあればいいのですが。
(3) 中央快速はまず新宿発で見ました。7:41〜8:41でみたところ27本、東海道線と同様にこの時間帯が発駅(中野)の時間帯なら6分くらいかかるだろうと7:47〜8:47でみたところ28本でした。一方、中野発でみるとやはり28本だったので28本にしましたが、これはご指摘の通勤快速を落としていました。
では新宿発が、通勤快速を含めて27本とか28本になるのはなぜなのか?列車が途中で消えるはずはないのに?ということで考え込みました。ライジングさんなら自明かもしれませんが、新宿の手前で詰まるので7:41〜8:41の60分間(61分間?)に中野を出ても、新宿発はそれ以上の62分とか63分にまたがってしまうからなのでしょうね。やはり本数カウントのルールを知りたいところです。
と、ここまであれこれ書いていたら、表全体の正確さという点では本数も表中にあるので大切ですが、混雑率に絞れば、本数そのものが多少違っていても、その本数(編成というか通過両数と定員)に対応する輸送人員がきちんと計上されていれば(これが一番難しそうですが)、正確な数字が得られるのだと気がつきました。
そうかそういうことなんだ……。ライジングさん、皆さん、そしてJR東さん、たいして重要でもないことにこだわっていたようです。JR東さんは幸い読んでおられないと思いますが。
TXサイドは、沿線自治体の人口が現在も増えていることから、回復の見込みはあると考えているようです。
https://www.mir.co.jp/company/plan_2021-2023.pdf
>武蔵野線の東浦和→浦和の混雑率の低下が少ないのは不思議
在宅勤務に切り替えられるのはいわゆる「オフィスワーカー」が主なので、「オフィスワーカー」の比率が高い印象のある東海道線の減少の度合いが記事にあるとおり最も大きくなっているのではないかと思います。逆に武蔵野線の減少の度合いが小さいのは、データはありませんが「オフィスワーカー」の比率が少ないのが理由ではないかと考えています。
また、小田急江ノ島線南林間→中央林間の減少の度合いは14%と武蔵野線の16%よりさらに小さく、データが限られていますが、都心部より郊外のほうが減少の度合いが小さい傾向も見受けられますね
オフィスワーカーの比率は影響すると思いますが、通勤者のうちリモートができる者の割合の各線(各地域)間の相違は、これだけで説明できるほどは大きくない気がします。
東海道線の減少率は大きいですが、近傍地域を同じく都市方向に向かう小田原線や田園都市線の減少率は、東海道線ほど大きくありません。けれども東海道線利用者のリモートの割合が、これらの線に比べてぐっと多いとは考えにくいです。
ですので、ラッシュ時のもう一つの大口利用者である通学者の差もありそうな気がします(彼らもオフィスワーカーではないので、同じことを考えておられるかもしれません)。大学はリモートになったところが多いようですが、中高生は調査時期にはせっせと学校に通っていたと思います。そして、都心方向の動きが圧倒的に多いであろう通勤者に比べて、通学者は環状方向の動きが多い気がします(データはありませんが)。江ノ島線も環状方向という性格も強いと思いますので一致します。しかしながら、南武線や横浜戦の減少は武蔵野線より多いので、この説明も十分ではありません。
スパっとした答はあるのかなあ……。
https://www.chugoku-np.co.jp/local/news/article.php?comment_id=778813&comment_sub_id=0&category_id=112
・国土交通省が令和3年度(2021年度=昨年度)の都市鉄道混雑率調査結果を下記(1),(2),(3)にて発表
(1)https://www.mlit.go.jp/report/press/tetsudo01_hh_000176.html
(2)https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001491866.pdf
(3)https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001492054.pdf
※上記(2),(3)によると、首都圏最混雑は日暮里・舎人ライナーで変わらず。首都圏JR1位も武蔵野線,首都圏地下鉄1位も三田線のまま
※上記(2),(3)と2020年度調査結果(記事本文のURL参照)との主な比較は以下の通り。
・首都圏JR…+−10以上の変動はなし(横須賀線−7が最大)。なお常磐快速線は測定区間変更
・首都圏地下鉄…埼玉高速,日比谷線,横浜市営グリーンラインが+10以上、半蔵門線が−10以上
・首都圏私鉄等(東京メトロ除く)…東武伊勢崎線,東葉高速,東京モノレール,ニューシャトルが+10以上、東急目黒線,田園都市線が−10以上
2020年度と比べると、利用客数が回復した箇所とほぼ同じ箇所、そして減少が止まらない箇所の三パターンに分かれているようですが、何となくですが東京の城南(渋谷、目黒)方面に行く路線は減少の傾向が見られます。コレがどういう理由なのか…利用客の属性による部分(客層、職種・業種、定期or非定期云々)が大きい様に思いますが、ダイヤ面でも大きな影響を与えそうです(現に東京メトロや名古屋市営地下鉄等は結果を踏まえたダイヤ変更の可能性が高い)。
ご覧いただきありがとうございます。
昨日の投稿では+−10以上変動した区間のみ取り上げた関係で割愛しましたが、東急東横線も20年度比でやや低下しておりますね。
・日暮里・舎人ライナーの混雑対策等に関する乗りものニュースの記事(下記)
https://trafficnews.jp/post/120857
【JR東日本】21年度の各駅の乗車人員が公表されました。
https://www.jreast.co.jp/passenger/
混雑度の方でもそうでしたが、21年になって利用客が回復した箇所と、減少が止まらない箇所の二極化が進行しているように感じます。オフィス街と目される地域の駅では減少が見られますが、個人的には渋谷駅が10%以上の回復だったことが、混雑度とは違う結果だと思って驚きました。
・西鉄貝塚線に関する毎日新聞の記事(下記)
https://mainichi.jp/articles/20220804/k00/00m/040/389000c
・国土交通省が令和4年度(2022年度=昨年度)の都市鉄道混雑率調査結果を下記(1),(2),(3)にて発表
(1)https://www.mlit.go.jp/report/press/tetsudo04_hh_000112.html
(2)https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001619624.pdf
(3)https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001619625.pdf
※上記(3)によると、首都圏最混雑は今回も日暮里・舎人ライナー(「155」%)。首都圏JR最混雑は「149」%の埼京線に変わる(前年度1位の武蔵野線は「148」%)。首都圏地下鉄最混雑は「140」%の南北線に変わる(前年度1位の三田線は「135」%)。全国大手民鉄最混雑は今回も西鉄貝塚線(「154」%)。
※上記以外については後程コメントしたいと思います。
・首都圏JR…東海道線,常磐快速線,総武快速線,京浜東北線南行などの上昇幅が特に大きい。
・首都圏地下鉄…先述の南北線のほか有楽町線,副都心線の上昇幅が特に大きい。半蔵門線は若干低下。横浜市交グリーンラインは変わらず。
・首都圏大手民鉄…京成押上線,小田急江ノ島線,東急目黒線などの上昇幅が特に大きい。京成本線は若干低下。
・関西各線…JR阪和線,阪急神戸本線などの上昇幅が特に大きい。
・上記以外で特に気になった路線…JR信越線は変わらず。JR可部線は低下。JR九州では鹿児島線上り快速二日市→博多間,豊肥線肥後大津→熊本間の上昇幅が特に大きい。広島電鉄2号線が大幅上昇。
※上記で取り上げなかった路線も含め、前年度に比べ混雑率が上昇している路線が多いですが、それでもコロナ前の2019年度の混雑率には及ばない路線が多いです(関西のJR(一部除く)や元々混雑率がさほど高くない路線を除く)。ただし、コロナ5類移行等の影響で今年度(2023年度)に入り混雑率がさらに上昇している路線もあるものと思われます。
※参考資料:JR東日本が2022年度の各駅乗車人員等のデータを公開(下記(4)=本件に関するJR東日本のリリース)
(4)https://www.jreast.co.jp/press/2023/20230707_ho04.pdf
https://www.mlit.go.jp/report/press/tetsudo04_hh_000130.html
混雑率のワースト5は日暮里・舎人ライナー(171%)、広島電鉄2号線(164%)、日比谷線(162%)、埼京線(160%)、中央快速線、西鉄貝塚線(158%)となっています。