運輸総合研究所は2022年7月、成田空港の鉄道アクセス改善に向けての提言を発表した。有識者を集めた会議を開いて検討したもので、京成やJRの複線化、長編成化、速度向上などの根本策をまとめた。
成田空港では、新滑走路の整備などで飛行機の着発回数の大幅増加(年間30→50万回)が予定されている。2019年度に国交省が実施した予測では、年間50万回到達後の2045年には、京成スカイライナーもNEXもピーク時には定員を超える需要が見込まれるほか、京成本線は一部時間帯に混雑率200%に達するとしている(2019年度当時と同じ輸送力だと仮定)。今回の提言では、コロナの影響を考慮して一定の遅れが見込まれるものの、いずれこのレベルの輸送力不足が顕在化するとして、根本的な対策が必要だとした。
輸送力増強■「まず長編成化」、複線化は4案を提示
輸送力増強としてまず挙げたのが、長編成化と本数増加。スカイライナーは9両(現行8両)、NEXは最大15両(現行12両)にできると指摘している(NEXについては対応した留置設備が必要)。
しかし、本数増加については、現在の設備のままでは難しいとした。
その根本的な対策として挙げたのが、成田空港付近の京成とJRの複線化だ。現在は一部を除いていずれも単線。提言では、複線化を4案検討し、それぞれの概算工事費を算出している。4案のうちもっとも安いのは、南側に京成のみ線増(JRは単線のまま)する案で700〜900億円。高いのは北側に京成とJRのどちらも線増する案で1000〜1400億円だとしている。ただし、都心側の増発余地の確保も必要だとして、京成については押上線の活用を挙げている。
施設整備には時間がかかることから、成田空港会社が中心となって、鉄道会社、自治体、国などと検討を進めることを期待するとしている。
利便性向上■スカイライナーの200km/h化「長期的視点で」
さらに、求められる鉄道サービスとして、所要時間の短縮を挙げ、都心と空港を20分台で結ぶことが望まれるとした。特にスカイライナーには高速化の余地があるとして、現行の130キロ区間を160キロ区間に上げるほか、長期的な視点で最高時速200キロ化の検討を開始することを提案している。また、駅設備面では、京成本線の二重改札の解消のため、ホーム増設を挙げている。
そのほか、羽田と比較して所要時間差の少ない首都圏北部のアクセス向上が望まれるとして、大宮などの主要駅との直通列車の新設を提案している。また、千葉県内の需要増加をはかるため、千葉−成田空港間の増発が望まれるとしている。
ここから私見です。情報提供からだいぶ遅くなりましてすみません(こちらにコメントをいただいています)。実現性はわかりませんが、遠い将来を見据えた提言として、「時速200キロ」「JRと京成どちらも複線化」などの壮大な話は趣味的にも興味深く、記事にしてみました。もともとは、成田スカイアクセスが、成田空港のアクセス向上の起爆剤だったわけです。京成も計画通りスカイライナー20分間隔化を果たしたのですが、ご存知の通りいまはコロナ禍で厳しい状況です。NHKの取材に対して成田空港会社は「国と協議しながら検討を進めたい」と回答しているそうですが、今後これに国がどう関わっていくのかは、国交省がポストコロナをどう捉えているかということにもつながりそうです。
(運輸総合研究所)
https://www.jttri.or.jp/research/narita_access.pdf
(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220822/k10013781811000.html
この情報は、えびすこさん、ライジングさんからいただきました。ありがとうございました。
2022年09月09日
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記事を作成していただきありがとうございます。また、えびすこ様の情報提供の後追いでコメント欄にタビリスを紹介しただけの私を情報提供者に含めていただきありがとうございます。
さて、この提言を踏まえて各社アクセス改善の検討に入るのでしょうか。
成田空港〜大宮間直通の「成田エクスプレス」が3月に廃止されたばかりですが、新たに直通列車を設定するとしたら常磐線,武蔵野線経由等になるのでしょうか。京成も押上線活用となると地下鉄直通の「スカイライナー」設定を考えるかもしれません。
ただ現状の空港アクセス列車利用状況を踏まえると実現は当分先のこととなるでしょうか。
私としては、輸送力増強等の前にまず京成空港第2ビル駅上り京成本線ホーム(3番線)の8両化をお願いしたいのですが…。
参考資料
・下記(1)=京成電鉄長期,中期経営計画(空港輸送関連は32ページ目=ページ番号31),下記(2)=京成電鉄2022年3月期決算説明会資料(空港輸送成績は29ページ目=ページ番号28)
(1)https://www.keisei.co.jp/keisei/ir/library/dl/presentation/2023_d1-plan.pdf
(2)https://www.keisei.co.jp/keisei/ir/library/dl/presentation/2022_kessan_1.pdf
インパクトの大きい提言ですが、気になったのはスカイライナーの200km/h運転化の検討です。成田スカイアクセス線は直流1500Vですが、現状でも電圧が足りないという話を聞いたことがあります。
海外の鉄道には直流1500Vで200km/h運転を実施している路線があるのかもしれませんが、詳しくないので何とも言えません…
ひとまず現状の電気設備のままで速度向上を行うとは考えづらいので、電鉄用変電所の増設をして饋電区間を短くするか、もしくは大穴ですが直流3000Vの昇圧が検討に挙がるかもしれませんね。
いずれにせよ今後の動向が気になるところです。
スカイライナーの時速200km化ですが、
仮に行うとすれば、全国新幹線鉄道整備法が定める、
「新幹線とは、主たる区間を時速200km以上で走行できる鉄道」
の定義に該当する可能性が出てきます。
JR各社の新幹線と異なり、時速200kmで運転できる区間はごくわずかでしょうから、
引き続き在来線として扱うことも考えられますが、法の定義との整合性が気になるところです。
もっとも、これらの話は「成田空港の利用者が想定通りに増える」ことが大前提で、
人口減少が進む日本にあって、国内利用者が伸び悩むのは火を見るよりも明らかですから、
外国の皆さんに「日本に行きたい」と思わせる戦略を、観光庁などがしっかりと組めて、それが成果を出せるか、
そういったところにも左右されると思われます。
スカイライナーで想定されているのは200q/h運転で、列車の出力もはユーロスターの3400kwより大きな4200kwですが、電圧は2倍の1500Vで列車重量は半分以下の300tです。なので、銀千ハイパワーさんが書かれた変電所の増設、あるいは変電所の増強、架線の強化(饋電線やトロリー線を太くしたり増やす)といったことは必要になるかもしれないですが、根本的に無理ということはないと思います。
一方、直流3000Vへの昇圧には、門司・下関間の交流化と同様、高圧化に伴って絶縁構造が複雑で大型になるほか、架線と車両の屋根との間などをもっと離すためにトンネル断面を拡大する必要が生じる、といったより根本的な問題がありそうです。
現状を見ると、輸送力増強が必要になるような日がほんとに来るのかという気が先の見えない私にはしますが、外貨を稼ぐ手段がどんどんなくなっている落日の日本では観光は頼みの綱で、ここは貧乏でも金を惜しんではいけないのかもしれません。
一人当たりGDPが世界2位とかだった時から20年くらいしかたっていないのに、今は20位あたりに沈没し、さらに毎年一国ずつくらいに抜かれています。もはや先進国とは恥ずかしくて言えないし、海外からもみられていない。アジアに限ってもシンガポールは背中も見えない彼方で、香港、韓国に抜かれて台湾はすぐ後ろに迫っています。これからよほど頭を使って頑張らないと、少しでも高い給料と職を求めてインドネシアや中国などなどに出稼ぎに行って苦労する時代が間もなく来るのでしょう。
・成田空港に関する「47NEWS」(共同通信)の記事(下記)
https://www.47news.jp/news/8314078.html
・運輸総合研究所で開かれた第1回「『新しい成田空港』構想検討会」を報じた「Impress トラベル Watch」の記事(下記)
https://travel.watch.impress.co.jp/docs/news/1451552.html
・成田空港の駅に関し各社が報道(下記(1)=日経電子版の記事,下記(2)=「47NEWS」(共同通信)の記事)
(1)https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC0650W0W4A200C2000000/
(2)https://www.47news.jp/10494858.html
NAAの資料を見ると新ターミナルは第一と第二の間にできるようですから、鉄道としては、京成本線-東成田線-新駅-芝山鉄道、京成スカイアクセス線第二ビル-新駅、JR第二ビル-新駅として、本線の第二ビル分岐を廃止すればスッキリですね。
いっそ土屋-第二ビルも三線軌条にすれば信号所すれ違いも解消できるのでは?とも思いますが、線路こそ成田空港高速鉄道保有でも、信号システムとかいろいろ考えると共有せずにすれ違い待ちをするほうがいいのでしょうね。
もっともワンターミナルは巨大になりすぎて、ターミナルに入ってからAPMとかありそうな気もしますが。
https://www.naa.jp/jp/airport/new_narita_airport.html